一個人の備忘録

メモのようなもの

『ミスト』

 

突然不可解な濃霧が発生し、その中から恐ろしい怪物たちが姿を現し、人々を襲い始める。たまたまスーパーに居合わせた主人公親子と他の人々は、店内に立て籠もることになるが、家族のために家に帰ろうとする人、怪物の存在を信じず出ていこうとする人、宗教にかぶれていて人々を扇動しようとする人など、一致団結というわけには行かなくなる。果たして人々の運命は。

 

いい映画だったとは思う。それぞれの人たちの描き方もとてもリアルで、こんな不可解な状況に追い込まれたらそりゃそうなるわな、と思える。にしてもあのラストは……。しかし、ラストが普通にハッピーエンドだったらここまで心に残る映画にはならなかったと思うし、「希望を最後まで捨ててはいけない」ということがこの映画が伝えたいメッセージなのだとしたら、このエンディングで正解なんだろうな。

 

『キュア 〜禁断の隔離病棟〜』

 

ニューヨークでバリバリ働く青年が、ある事情により、辺鄙な地にある療養所に行ったきり帰ってこない社長を連れ戻しに行く。そこではその地の特別な水を使った療法が行われていて、老人たちがたくさん暮らしていた。面会に行った社長になかなか会わせてもらえなかったり、何か不審な空気を感じた青年は色々探ろうとしているうちに、療養所の闇を知っていく。

 

途中までめちゃくちゃ先が気になって仕方なかったのだが、最後まで見ると割と拍子抜け。映像とか、醸し出される雰囲気とか、役者の演技なんかは全て良かったのに。似た映画でいうなら、『シャッター・アイランド』の方が断然良かったかな。あんな水で療養せずに、ウナギ食って精でも付けたほうが良いのでは。

 

『アンブレイカブル』

 

乗客のほとんどが亡くなるという列車の脱線事故において、たった一人だけ無傷で生き残った主人公。彼は、自分だけが生き残ったことに不可解なものをうっすら感じるが、よく考えてみるとこれまでに怪我すらしたことがなかったのだった。そんな彼の前に、骨がすぐに折れるという難病の男(ミスター・ガラス)が現れて、主人公を思いもしない方向へ導いていく。

 

ずっと陰鬱な雰囲気の中でストーリーが進むので、途中までこれがヒーローものだと気づかなかった。いわゆるヒーローものを、リアルな世界に即した形で再構築したような映画。ミスター・ガラスを主人公にしてスピンオフものもあるらしい。

 

 

『羊たちの沈黙』

 

FBI研修生であるクラリスはある時、連続殺人犯として収監されているレクター博士と面会するように上司に指示される。それは、世間を賑わせていた連続猟奇殺人犯のバッファロー・ビルを逮捕するのに、博士に協力を仰ぐためだった。博士と対面したクラリスは、自らの過去のトラウマと向き合うことになる。そんな中、議員の娘がバッファロー・ビルに連れ去られるという新たな事件が発生する。

 

ストーリーが面白いのはもちろん、レクター博士という稀代の猟奇殺人犯と、FBI研修生という、いわばひよっ子のクラリスの間に妙な信頼関係があったりとか、クラリスが子供の頃のトラウマとどう向き合ってるのかなど、人物の描写がとにかく面白かった。

 

 

『NOPE』

 

ハリウッド映画に馬を貸し出す牧場を営む父親が、空からの落下物が当たって亡くなるという悲劇に見舞われる。その息子と娘が跡を継いだのだが、息子は父親が亡くなった時に見た、空に浮かぶ何かが父親の死に関係があるのではないかと不審に思う。妹はそれを映像に残せばバズるのではないかと考えて策を講じ始める。そこから謎の物体と兄妹との戦いが始まる。

 

あらすじを書くとよく分からない感じになるのだが、本当にそういうお話だったので。しかし全体の雰囲気としてはどこかしらコミカルでクスッと笑えるようなところもあるのに、出来事は全部壮絶なので、不思議な映画だった。人種差別だったり、人間のエゴだったりというテーマを扱いつつも、ホラー映画というエンタテインメントに仕上がっている。一筋縄でいかない感じが印象的な映画だった。

 

『インターステラー』

 

地球の寿命が近づく終末の世界。主人公のクーパーは家の中で起こる不思議な現象に導かれて、新たに人類が居住出来る星を探すミッションに参加することになる。しかし、クーパーには二人の子供(どちらも学生)がおり、上の男の子はクーパーか行くことに理解を示すものの、下の女の子は強硬に反対し、出発の日にも見送りにすら来ない始末。果たしてクーパーはミッションを達成することが出来るのか、そして子供たちとの関係は修復されるのだろうか……。

 

難解な点も多かったので解説サイトなどを見て何とかある程度分かった(笑)。終末を迎えた地球ということなんだけど、その設定が細部まで考えて構築されているので妙にリアル。家族に関するストーリーも感動的で、長い映画だったが最後まで飽きずに観られた。

 

『ナイトメア・アリー』

 

着の身着のままで見世物小屋に潜り込み、そこで下働きをすることになった主人公・スタンは、そこて知り合った読心術の師匠にショーのやり方を教わる。しかし、肝心なところを教えてくれなかったことに反発し、アル中の師匠に飲んではいけないメチルアルコールを飲ませて殺し、読心術の秘訣を記したノートを手に入れる。程なくしてスタンは、より大きな野心を抱いて、見世物小屋で出会った恋人モリーと共にニューヨークに出る。それがやがて破滅へと向かうとは知らずに。

 

ずっと退廃的な雰囲気で話が進むので、これは絶対バッドエンドだろうなと誰しもが思うのでは。それにしてもブラッドリー・クーパーの魅力的なこと。人間としての道を踏み外して、破滅へと突き進む主人公をどこか憎めない人間として演じ切っている。ラストは自業自得と言えばそうなんだけど、どんな人でも少しは持っていそうな人間の弱さを突き付けられている気がして、泣きそうになる。